身体の健康と心の健康どっちをとるか
高齢者が本当に食べたいものは?
巻き寿司を美味しそうに食べるおばあちゃん
私の知り合いのおばあちゃんは、巻き寿司が大好きで、入れ歯もつけずに一切れ丸ごとパクっと口に入れて、あっという間に飲み込むのです。ほぼ噛まずに飲み込んでいるように見えます。そして一本分ぺろりと食べてしまいます。見ていると怖いんですが、とっても幸せそうです。好きなものはもしかして喉に詰まらないのだろうか…いやいやあれだけお餅をのどに詰める方が毎年たくさんいるのだから、そういうわけでもないのかな。
とにかく、巻き寿司一切れを丸ごと口に放り込むおばあちゃんは本当に幸せそうなんです。
飲み込みにくい食品
この巻き寿司の具の中に、高齢者には飲み込みにくい具があります
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それは高野豆腐です。
高野豆腐の含め煮は、染み込んでいる水分だけが喉の奥へ流れてしまい、汁気がなくなりパサパサして飲み込みにくいということで、高齢者が気をつけた方がいい食品です。
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私がそのことを知ったのは、ヘルパーになる為の講座を受けた時でした。高野豆腐は栄養価も高く、私の祖母も母もよく炊いていました。昔ながらのおかずのような印象があるのですが、それが高齢者には食べづらいとはちょっと残念です。
その他に、飲み込む力が弱くなった高齢者の方には向かない食品ですが、焼き芋、ゆで卵、海苔、ワカメ、イカ、タコ、等それはもういろんなものがあります。喉の通りが良すぎて、汁物や水もよく咳き込んでらっしゃいます。
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細かく刻んだりとろみ材を入れたりするのも、喉に詰まらせない方法の一つです。私の好きな甘いものでは、カステラ、最中の皮、お団子、きなこ、なども注意したい食品です。
家族だからできること
仕事上、危険を避ける為に、高齢者の方の食べたいものを遠ざけてしまうことが多々あります。危険かなと思われるお団子を
「これ食べたい」
と言われると、
「危ないからやめておきましょう」
と言うのは非常に辛いところですが、仕事で携わるとどうしても安全第一になってしまいます。
自分の家族だったら食べさせてあげるんだけどなあ、と思います。私は、面会に来られたご家族が、施設では食べさせてあげられないものを食べさせてくださっているのを見ると、ちょっと危ないかなあと思いながらもありがたく思います。表情からとても満足されているのが分かるからです。家族にしかできないことがあります。そして仕事で携わってしまったからできないことがあります。
食べたいものを食べられる量だけ
もう10年も前でしょうか、訪問介護で90代の女性の方に週3回ご飯を作るという仕事がありました。そのメニューが毎回同じで、肉じゃが、お味噌汁、酢の物なのです。
「こんなのはどうでしょう」
と栄養の偏りの解消にと思い違うものを作りましたが、結局同じものに戻ってしまいました。
ヘルパーが訪問しない日は、配食サービスを使ってらっしゃいましたがあまり食べていないようでした。子供には成長を考えていろんな物を食べさせるところですが、もう90代の方に栄養がどうのこうの言っても、楽しそうでもありませんでした。食べたい物を食べたい量だけ召し上がって満足されているので、それでいいのだと思いました。
命を長らえる為ならバランスのとれた完璧なものがいいのでしょうが、その方は食べることを楽しみにしていて、自分の希望する食事が出て来ることが嬉しそうでした。
お父さんとアイスクリーム
私の勤めていた施設の入居者の方で、かなり弱った高齢の女性の方が
「アイスクリームを食べたい」
とおっしゃるので買ってきてお庭で食べてもらっている時に
「お父さんがよくアイスクリームを買ってくれたの」
とぽつりとおっしゃいました。その時のその方のお顔が、まるで10歳くらいの少女のように私には見えました。今、この方はお父さんといるのだなと思いました。
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食べ物は人と人を繋ぐのだと思います。
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